2019年04月10日

持田香織

持田香織のソロデビュー10周年記念ミニアルバム『てんとてん』は、今の生身の持田がそのまま音楽になった作品だ。ELT(Every Little Thing)のライヴでハイテンションで歌い客席を煽る姿からはイメージしづらい、少女の心を持ち続ける持田の音楽を楽しめるそうです

「今作は4枚目のソロアルバムです。7年前に3枚目をリリースしてからしばらくは、ELTをがっつりやっていました。ELTの20周年ツアーを終え、その間に結婚もしたので、今度は自分のペースで歌いたいと思ったんです。ELTのライヴは意識的に自分のギアを上げなくてはやれません。ファンの皆さんは新しい曲だけではなく、五十嵐さん(五十嵐充)が在籍していた、私が20代だった時期のヒット曲も聴きたいですよね。そういう思いにはお応えしたい。でも、ELTとは別に自然体の音楽が私には必要だな、と。それが今回のソロ活動につながっています。ギターの一朗さん(伊藤一朗)も、ELTだけでなく、テレビのバラエティ番組に出演するようになっていますし」

 ソロデビュー10年も迎え、「てんとてん」をレコーディングすることになった。

「2018年に鶯谷の東京キネマ倶楽部という雰囲気のある小さなホールが確保できて歌ったとき、ソロ10周年ですね、と教えられていたんですよ。私自身はすっかり忘れていて、10周年だったらアルバムをやろう、と思いつきました」

 アルバムは全5曲。うち3曲の歌詞を持田自身が書いている。曲は3人組の音楽ユニット、LITTLE CEREATURESの鈴木正人が書いた。

「演奏もLITTLE CEREATURESにお願いしました。よくライヴも観させていただいている大好きなバンドです。せーの! でライヴみたいに演奏も歌も一緒にやった曲もあり、とても楽しいレコーディングでした。メンバーに背中をそっと押してもらって声を出している気持ちよさがありました」

鈴木をはじめLITTLE CEREATURESは画用紙にスケッチをするようにやわらかな音を奏でていく、そこに透明感のある持田の声が、水彩の絵筆のように色付けしていく。どの曲も歌っている持田の表情が見えるよう。ちょっとグラムロックを感じる「あたらしき夜」や哲学的なタイトルの「君と僕の消失点」にも透明感がある。

「作品にもよりますけれど、ELTの歌詞では心の葛藤やそこから前向きに進んでいく気持ちを歌っています。意識的にしろ、潜在的にしろ、メッセージ性というのかな、リスナーの皆さんに何かを伝えようとする音楽です。一方、ソロの曲の歌詞は、どこにでも、だれにでもありそうな風景を切り取っている。私の日常やそこから生まれる感情を歌っています。アルバムのタイトル曲『てんとてん』は私のネイルの点のデザインをモチーフに歌詞を書きました。『そりゃ喧嘩もしますし』は大切な人との食事のシーンから生まれました。『Enseigne d’angle』はよく行く原宿のカフェです。ELTの『ソラアイ』の歌詞を書いた店で、そのときのことを思い出しながら書きました」

 音楽をありのまま楽しむ域にたどり着くには時間がかかった。

「ELTはもちろん楽しいけれど、とても苦しい時期も経験しました。かつては今よりもハイペースで突っ走っていたので。ミュージシャンとして、こうしなくちゃいけない、というシバリもずっとありました。かっこつけてもいました。恥もかきました。押しつけがましい歌になってしまうのが嫌で、だから迷って、悩んで、思うように発声できなくなる悪循環にも陥りました。だから、かつてのソロアルバムのときは、何かを探したかった。何かを見つけたかった。それで井上陽水さんにプロデュースしていただいたり、小野リサさんや谷山浩子さんとご一緒させていただいいたり、自分で作曲も手掛けてみたり。それによって、ELTとは違う世界を見ることができました。でも今回は、ただ思い切り楽しませていただいたアルバムです。かっこ悪いことも恥ずかしいことも全部ありのままさらけ出した、等身大の私の音楽だと感じています」

 そのマインドになるには、結婚が大きな転機になった。

「芸能界というか、音楽界というか、この世界で私はずっと守ってもらってきました。それはふつうじゃないですよね。自分ではふつうでありたいと心のどこかで思ってきたつもりなのに、ELTの持田香織であることをいつの間にか過剰に意識していた気がします。周囲に甘えてもいた。でも、ありのまま等身大の自分でいることしました。私、なんでも正直に話してしまうから、後悔したり、反省したりも多いんです。テレビ番組でELT以前のアイドル活動の話をしたせいで、かつての水着の写真がばーんと出てしまって、そりゃあ、ああ、言わなきゃよかったな、と思います。悔やみます。でも、気にしないことにしました。すると、とても楽になった。特に結婚してからは、夫のアドバイスもあり、社会ときちんと接する暮らしをしています。電車に乗り、バスに乗り、スーパーに買い物に行く自分を楽しんでいます。打ち明けると、私、電車のプリペイドカードのチャージもできなくて、夫に教わったんです。このままだと、子どもができても何も教えられない親になると思いました」

 そういう今の持田の日常が『てんとてん』にパッケージされている。歌詞の内容は、持田本人が言うように、どこにでもありそうな内容。しかし、とても活き活きと歌われている。心と体のコンディションのよさも、声から伝わってくる。

「夫がスポーツトレーナーなので、彼のアドバイスでエクササイズをしています。以前は泳いでいたんですけれど、最近はランニングに切り替えました。自然と触れ合いながら週に2回か3回走り込んでいます。途中で坂道ダッシュも入れて。体幹が強くなり、大腿筋や大臀筋が鍛えられてきました。ELTのツアーでは、週末に2日間連続でスケジュールが入ってくる。土曜日の終演後に深夜移動して、日曜日に次の街で歌います。体力があった20代のころの曲もやります。フィジカルが充実していなくてはできません」

 現在行っているソロツアーでも楽しそうに歌い、ステップを踏んでいる。

「ソロのツアーも好きな曲を自由に選んで歌っています。アルバム『てんとてん』をはじめソロアルバムの曲を中心に、ふだん私が口ずさんでいる曲もカバーしています」

日吉ミミの「世迷い言」をはじめ、KIRINJIやあみんの曲も歌う。うしろゆびさされ組の「うしろゆびさされ組」では大胆な振りも披露。

「1970年代の『ムー一族』というドラマの劇中歌『世迷い言』は、私の大好きな曲。スナックへ行っては歌っていました。『うしろゆびさされ組』は、おニャン子クラブでは高井麻巳子さんのファンだったので、ステージで一度やってみたかった曲です」

 ソロツアーではELTとは別の、素の持田を思い切り解放している。

「これからは今まで以上に音楽を楽しんで、そんな自分自身や、暮らしの中のわくわくも音にしていきたいです」
ラベル:持田香織
posted by ぴーすけ at 14:27| 芸能 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする